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ファシリテーターから
Vol.79

新入社員研修を考える3 ~研修実況中継!研修風景を写メで友達に送信!

投稿者:吉村 啓邦更新日:2009/12/10

クライアント企業の中には、新入社員研修中の携帯電話の使用を完全に禁止するところも多いですが、外資系の企業などでは、研修中は電源を切るかマナーモードにする以外のことは各人に任せているところも結構あります。
そうしたクライントの新入社員研修の現場で、数年前からかつては見られなかった光景が見られるようになりました。それは研修の合間の休憩時間中に新入社員が携帯でメールを送るという光景です。ひょっとすると随分前から行われていたことなのかもしれませんが、私が気付くようになったのは四、五年程前からです。
特に四月一日や二日は、ほとんどの企業で新入社員研修が行われています。そこで、かつての大学や趣味サークルの同学年の友人に「今、こっちはこんな研修やってるよ。そっちはどう?」などと、ご丁寧に写真入りでやり取りをしているのです。

新入社員の一人に内容を見せてもらったことがあります。そこには別の企業に就職した友人から、「もう眠くて死にそう」「何言っているのかさっぱり分からない」など今行っている研修への不満がびっしりと書かれていました。
幸い、私の研修を受けていた新入社員は、私が隣にいたとこともあるのでしょうが「こっちは楽しいし、タメになるよ」などと書いてくれてほっとしました(笑)
私は友人とやらから送られてきたメールを覗き込みながら、すぐ隣にいる私の研修を受けていた新入社員に「分からないんだったら分からないって言えばいいのにね」と同意を求めるつもりで聞きました。
しかし、私の隣にいた新入社員はとても驚いた顔で「そんな大胆な!」と言うのです。私の価値観からすれば、今受けている研修の評価を友人とやり取りしていることを講師に公表することの方がよほど大胆に思えますが(笑)
そこで、近くにいた新入社員も集めて、どうして聞かないのかを訪ねて見ました。すると、
・恥ずかしい
・目立ちたくない
・進行を邪魔していると思われたくない
などの答えがありました。いずれにしても自分に注目が集まることを極端に恐れている気がしました。

 しかし、その片方で多くの新入社員が早い時期に辞めていく典型的な理由の一つに「仕事をきちんと教えてくれない」「放って置かれている」といったものがあります。それからすると新入社員は過度に注目されてもダメだし、かと言って、全く見てもらえないのも嫌なようで、このことだけからすると「やれやれなんと手のかかる…」と思いがちですが、実はこれは新入社員だけでなく、全ての人に共通する普遍的な心理でもあると思うのです。
例えば、中堅のマネジャーだって、会社の存亡を決めるようなプロジェクトを任されて、毎日のように「社長以下全社員が君に注目しているぞ!」などと言われたら胃を痛めてしまう人もいるかもしれません。だからといって、それだけのプロジェクトを任されているのに、誰からも見向きもされないのではやはり「オレは何のために頑張っているんだ?」と自分の仕事や自分の価値を疑ってしまうかもしれません。
つまり、程度が違うだけで「過度に注目されたくないけど無視されのはイヤ」というのは、ある程度多くの人に当てはまる心理だと思うのです。裏返して言えば「適度に見る」ということが大事なのではないかと思います。

話は少し変わりますが、私には子供が二人いて(一人は中学生、一人は小学生)たまに授業参観に行きます。しかし、残念ながら授業の質には感心しません。何が一番感心しないのかというと、「先生が、誰もが正解を答えられそうなことしか生徒に質問せず、順番に当てていく」という光景が当たり前のように繰り返されることがあるからです。何だか「一時限から二時限につき一回くらいは発言の機会が回ってくる」ことを意図して機械的に授業を行っているようにも見えます。
おそらく先生がいきなり特定の個人に続けて質問をして「本当にそれでいいの?」「どうしてそう考えたの?」などと追及しだしたら生徒たちは普段との違いに戸惑ってしまい、何も答えられなくなってしまうかもしれません。反対に、一日経っても二日経っても発言の機会が一回も回って来ることがなかったら生徒は「私は先生に嫌われているのかも…」などと考え始めるかもしれません。
先生は、暗黙のうちに生徒との距離感を適切に維持するために、発言の機会と場を一定数の上にコントロールしているのかもしれません。

新入社員が受けてきた教育環境は皆違うのでしょうが、ひょっとすると何人かは、このような学校教育にしばしば見られがちな「過度に注目してはいないが無視しているわけでもない」関わり合い方に慣れていて、会社に入ってからもそのような関わりを無意識に求めているのかもしれません。
そうすることによって「単なる知り合い」以上、「いざとなったら助け合う親友」未満の「ゆるい友人」関係の中に人間関係をとどめておこうとしているのかもしれません。
しかし、こうした関係は一言で言えば「ぬるま湯」の関係で「居心地」は良くても「成果が厳しく問われる仕事で通用する関係」でないことは言うまでもありません。

このような関係から脱して、新入社員を骨のある人材にするためには新入社員研修の期間中、
・誰でも答えられることに関して均等に機会を与えることから始めて、
・少しずつ質問の回数を増やしながら
・最終的に、難しい問いや人によっては答えられない問いを入れつつ
・質問に答えられない際の返答のバリエーション「考え中です」「難しい問いなのでもう少し時間が必要です」「少し話し合いをしたいです」などを教え
・質問に格闘する姿勢そのものを評価する
ことが大事です。

しかし、現実の新入社員研修の現場では、講師が質問をして満足を得るような返答が得られないと講師が説明をする時間が長くなりがちです。言い換えれば、新入社員研修においては「何を学ばせるべきか」=コンテンツも重要ですが、それ以上に人事や研修スタッフと新入社員との関係性を戦略的に変えていくことが計画的に盛り込まれていなければなりません。
もういちど自社の新入社員研修を検証し、どこで興味を持たせ、どこで巻き込み参画させ、どのくらいで本音を話させ、どの段階で意思を表明させるのか、新入社員の主体性を段階的に高めていくプロセスが内在しているかどうかを見てみてください。

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